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2012年度(社)長岡青年会議所 理事長所信

第58代理事長 村上 揚市郎

 平成23年3月11日14時46分に発生した東日本大震災は、マグニチュード9.0という日本観測史上最大の地震規模と私たちの想定をも超える400km以上の広範囲への大津波により、国家危機と言っても過言ではない甚大な災害として大きな傷跡を残しました。地震によって発生した大津波は内陸10kmを超える地点まで到達し、幼い子どもや町並み、人々が築き上げてきた全てを一瞬にして奪い去って行きました。更に安全と言われてきた原子力発電所を襲いかかった津波は、未だ解決策が見いだせない深刻な放射能問題を引き起こし、被災地のみならず、広範囲に及んで影響を与え続けています。

 まずは、この度の災害により亡くなられた方々へ、心よりご冥福をお祈り申し上げます。また、残されたご遺族の皆様、被害を受けられた方々へお悔みとお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧、復興をお祈り申し上げます。

 震災発生直後より、我々(社)長岡青年会議所(以下、「長岡JC」とする)は新潟県中越地震での御恩を返すべく使命感を主軸にし、これまで培ってきた経験を元に敏速且つ効果的な支援活動に取り組んで参りました。被災地で支援活動を展開するにあたり、多くの方々よりご支援を賜りましたことに、心より御礼を申し上げます。

 着々とインフラ整備を中心とした地域復旧が進む中、真の復興は被災地域が自らの手で創り上げるものだということを側面的な支援として伝播し、本年度も支援に取り組んで参ります。

「気概」 青年の青年による 誇れる長岡の創造

はじめに

 今日本の経済は危機的状況にあります。サブプライムローン問題に端を発したリーマンショックから立ち直りを見せ始めた矢先に、昨年東日本大震災が起こり、自動車関連の産業や農林水産業を始めとする多くの産業に打撃を与えました。また、原子力発電所の被災から発生した放射能問題は、直接的被害だけでなく、諸外国による日本からの輸入禁止措置や観光客の減少などの風評被害、家畜飼料からの二次汚染などによる間接的被害など大きく日本の経済に、ひいては長岡の経済に問題を起こしています。さらには、欧米の財務不安から金融市場は混乱し、歴史的な円高が地域産業の空洞化を招きました。現在日本の経済状況は戦後のように混乱し、先の見えない状況だと言えます。

 「新日本の再建は我々青年の仕事である」昭和24年9月3日、東京青年商工会議所(現社団法人東京青年会議所)の設立趣意書の冒頭の一文です。戦後の荒廃した日本を背景に発せられたこの言葉は、今まさに現代を生きる我々青年の使命であり、希望に満ちたよりよい故郷を創造すべく、我々は、強い覚悟をもってまちづくり活動に取り組んでいかなければならないのです。

ひとづくりによるまちづくり

 私は昭和48年生まれです。団塊ジュニア世代と呼ばれ、物質的、経済的には比較的恵まれた時代背景の中で育ちました。身の回りのことなどいろいろなことを家族や地域の大人からやってもらって育った世代だと今になって感じます。それが当たり前になり、子どものことは学校がやってくれるはず、地域のことは行政がなんでもやってくれるはず、少子高齢化や社会保障制度問題、国の財政赤字の問題など青年のこれからにかかってくる様々な問題に対して、青年の声が聞こえないのは、「誰かがしてくれる」そんな意識が根底にあるように感じています。

 学生運動が盛んであった時代の青年は、きっと自分たちの国は自分たちで創るという、それぞれが強い覚悟と信念を持っていたのでしょう。現代の青年にはそういう気概が少ないように感じます。しかし、青年会議所という学び舎に入り、様々な活動をすることで、自分たちがまちづくりに参画していかなければならない責任と覚悟、強い信念と大きな理想を持つことができます。地域の発展なくして、我々の企業の発展もない中で、我々青年には大きな責任があります。

 背伸びをしながら日々様々な活動をすることで自主自立した人間即ち大人に成長し、覚悟を決めていろいろな立場の役職に挑戦していくことは、いかなる場面に遭遇しても立ち向かえる力が付くのです。

 今の時代の会員拡大は、まちづくりに対し無関心で無責任、「誰かがしてくれる」と思っている青年を、一人でも多く自分がやらなければならない覚悟と責任をもった大人に育てるための機会であり、それはまさにまちづくりのスタートであると考え、本年度も会員拡大活動を積極的に行って参ります。

市民協働によるまちづくり

 現在長岡市は「地域資源を国内外に向けて発信し、都市としてのブランド力を向上させることにより、地域の新たな産業や文化を創造する原動力を生み出すとともに、市民の『ふるさと長岡』への誇りを一層高めるため」としてシティプロモーションを行っています。

 また、本年シティホールプラザ「アオーレ長岡」が竣工され、あらゆる世代の多様で自発的な活動を実現する場となるよう活用が期待され、シティプロモーションの理念に沿った活動に対する基幹的役割も担います。さらには市民と行政の協働によるまちづくりを目指すことを目的とした市民協働条例の制定に向けて検討委員会が設置され、条例が本年にも制定されるよう聞こえています。

 これだけの整備が進む中、我々青年はまちづくりを「行政がしてくれる」と思ってはいないでしょうか。よいまちを創るには、市長だけでなく、行政だけでもなく、企業や市民などあるいは、市政に無関心な青年世代をしっかり巻き込み、地域一体となる取り組みを行わなければ、全く意味のないものになってしまいますし、他に誇れる長岡の創造はできないのです。

 青年の青年による誇れる長岡の創造こそ、我々長岡JCの市民協働に係わる目的であり、本質であると考えます。

 また、我が長岡市は、昭和59年8月1日に非核三原則の遵守と核兵器の廃絶を求め、世界の恒久平和維持への願いを込めて、「非核平和都市」とすると宣言しました。我々長岡JCも戦争の悲惨さを伝え、戦災殉難者の慰霊を行い、これからの平和を願いながら同年同日より柿川灯籠流し事業を執り行って参りました。しかし世界を見渡せば様々な地域で戦争や暴動が起こっています。日本においても領土領海問題や拉致問題などもあり、本当に世界の恒久平和維持への願いを強く思います。

 本年も、長岡の市民の皆様と恒久平和への願いを込めて、第29回柿川灯籠流し事業を執り行うとともに、改めて恒久平和を誓った長岡の市民として、また長岡JCメンバーとして、平和についてどう向かい合うべきか取り組む必要があると考えます。

 また、2005年度から震災後のシンボルとして親しまれてきた夢神輿も、安全性の問題など見直しを含め、様々な視点から検証を行い、これからの長岡まつり事業の継続的発展を目指し、昨年大幅にリニューアルをし、新たに「長岡JC神輿」として立ち上げました。市民との協働として、本年もより多くの皆様から参加していただき、共に汗をかき、一体となって長岡まつりを盛大に盛り上げて参ります。

 2005年より始まりました「復興祈願花火フェニックス」において、長岡JCは立ち上げ当初から携わって参りました。復興のシンボルとして10年を目途に打ち上げられているフェニックス花火も残すところ3年となる中、長岡花火の代名詞となるような花火となったフェニックスはこのまま終わらせてしまっていいのでしょうか。限られた団体だけで運営することが難しい大きな事業です。本年も「みんなであげようフェニックス」を合言葉に市民の皆様と協働できるよう活動して参ります。

地域活性によるまちづくり

 長岡を代表する産業は、長岡技術科学大学が所在することも含めた機械産業があります。あるいは豪雪地帯により育まれた建築技術やインフラの整備技術を持つ建設、土木業もあります。私はこれまでの長岡を作り、これからの長岡の発展に寄与する産業、今ある長岡の大きな地域資源として農業もその一つだと考えます。しかし現在の農業は、高齢化や後継者不足、収入不安定による離農者の増加や耕作放棄地の拡大、人口減による消費量の低下など様々な問題を抱えます。反面、全国的な食品の不正表示や無登録農薬の使用問題などによる、食の安全、安心に関するニーズが非常に高まっていることや、フードマイレージなどの環境に対する意識、政策として食料自給率の向上計画が策定されるなど、農業を活性化する機会も見受けられます。

 今まで農業をテーマにした取り組みは、生産者あるいはその流通業者と行政でした。しかし、これからの農業発展を願うのであれば、消費者や地域企業などまち全体で、お互いの役割を十分理解しながら進めていくことが重要であると考えます。

 農業や食に携わる様々な青年団体との協働を模索し、長岡の農業が活性化することが長岡地域の活性に繋がると考え活動して参ります。

メンバーの資質向上によるまちづくり

 昨今SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを活用した新しい情報発信の手法が取り沙汰され、様々な企業、個人で用いられています。しかし、使い方を誤ることで誤解を招く情報や持ち出してはならない情報が流出してしまい、問題になることも多々あります。地域企業の発展を進める上で、この新しい情報発信の手法をよく理解することが重要であると考えます。また、混沌とした時代の経営者あるいは経営幹部の一員として、しっかりとした経営資質が必要不可欠です。数字は経理が見ている、あるいは身内が見ていてよく解らない、あるいは日々の業務に振り回されて企業のビジョンが見出せないという話を聞きます。「自分の会社は自分で守り、自分で進める」青年経済人としてまちづくりに参画することが責任であるとともに、さらなる企業の発展に努めることが第一の責任であり、まずは「経営」というものを見つめ直し、さらなる企業の発展に向けてメンバーの経営資質の向上に努めて参ります。

青少年育成によるまちづくり

 昨年の大震災後、混沌とした世の中でワールドカップ女子サッカー、なでしこジャパンの大活躍は、本当に我々日本人に勇気を与えてくれました。また、本年はロンドンオリンピックが開催されます。昨年以上の勇気と夢を日本人に与えてくれることでしょう。長岡市においても2012北信越かがやき総体(全国高等学校総合体育大会)の水泳とテニスの競技が予定され、今夢に向かって頑張っている子どもたちの活躍が期待されます。

 スポーツは夢を持つことができ、努力をする苦しみや大切さを知り、結果が出せたことに喜びを感じ、仲間たちと支えあって友情を育み、応援してくれる人間に勇気と感動を与えてくれます。また、周りと一体となって日本を応援する、地域を応援することができ、愛国心や愛郷心をも感じさせてくれます。精神的にも肉体的にも大きく成長させてくれるスポーツを通して、我々の後のまちづくりを担う青少年の健全育成に努めて参ります。

地域ビジョンによるまちづくり

 1982年11月15日、我々の先輩は上越新幹線の開通の日を「長岡飛躍の出発点」とし、不屈の長岡魂を呼び起す起爆剤として「未来の長岡はこうありたい。」と決意を込めた未来像と「ありのままの長岡」の現実像、すなわち「夢とロマンと現実」をカプセルに託し、長岡の心を我々次世代に提言するため、タイムカプセル2012号を設置しました。

 今年で設置30年を迎え、本年11月15日にオープンを迎えます。この11月15日を長岡の活性のための起爆剤となるように盛大なオープニング事業を行って参ります。

 当時のメンバーは夢とロマンをしっかりと持ち、その実現に向けて一生懸命取り組んで来られました。この30年前の情熱を、現在の青年に対して長岡魂を呼び起す起爆剤としてしっかりと受け止め、我々が求めるこれからの地域の理想を考えられる事業を展開して参ります。

さいごに

 最後に、本年度は公益社団法人日本青年会議所(以下、「日本JC」とする)に多くの出向者を輩出いたします。今後も日本JCとの連携をしっかりととり、組織やメンバーの成長につなげて参ります。また、昨年総会でこれからの長岡JCを左右する大きな議案が2件決議されました。結果をメンバー全員の総意とし、今後の展開を進めて参ります。

 我々青年がまちづくりに参画することは、地域の発展に必要な「責任」であり、今まで育ててくれたことへの「恩返し」であると考えます。精一杯背伸びをしながらまちづくりを行えば、それは個人の成長として返ってきます。

 多くの先輩から受け継がれている情熱と様々な周りの方々からの協力をもって、地域の発展と企業の発展に、そして「明るい豊かな社会の創造」に向けて努めて参ります。